彼女、

最近めっぽう朝に弱くなった。主たる原因として例によった睡眠前の媒体の操作が挙げられるが、これらは明らかに薄弱たる意志の賜物である。先日芸術的思考を吹聴する若者を目にした。はっきり申し上げて私の彼への評価は散々なものである。自分を異端児と形容せんはその愚行において異端であり、本人への期待や憧憬など全くもって喚起されぬ。自らを貶めてこそ人間である。百獣の王はその武力を持って己の辣腕を誇示せんが、人間たるもの己の智恵に目を奪われいては知力の甲斐なく落ちぶれる。己を蔑み向上を図るものこそが人間界において百獣の王にも勝る猛者となる。それを体現せんは私の望むところである。そんなことを考えていた頃にとある少女の殊勝な発言を目にした。メディアの取材に応じた彼女は記者から後輩へのアドバイスを求められ、答えて曰く「助言を行うと彼女の才能を潰しかねない。あいにく私はそのような才能を持ち合わせていない。私のような身分の人間が助言を行うとは甚だしい。」という旨である。この発言を目の当たりにして関心を寄せないでいられようか。年輪を刻んだ人間ならまだしも、彼女というのは年の功二十年と少しである。少女である。何が彼女にそのような言葉を発せさせるのだろうか。それとも環境は関係なしに彼女の為人がためであろうか。この世はまだまだステたもではないと実感に至った昨夜であった。